御前崎市池新田大型産廃施設本格稼働阻止訴訟

2021/3/18更新

2021/3/18

大手産廃業者の大栄環境が御前崎市から全面撤退を表明

  1. 特別委での阿南澄男議員からの説明
    2021年3月15日(月)に行われた産廃処理対策等調査特別委員会で、産廃推進派の阿南澄男議員から、3月12日(金)に大栄環境へ行き、金子文雄社長らと面談をしてきたとの報告があり、大栄環境から「事業を中止し、御前崎市内から全面撤退することの表明があった」等との発言がありました。
  2. 中日新聞報道
    2021年3月16日(火)、中日新聞朝刊は一面で「大栄環境は、土地など財産の処分、管理が地方自治法で認められている特別地方公共団体『池新田財産区』(管理者・・・)が遠州灘近くに有する土地約二万八千平方メートルで産廃処理施設を計画していた。コロナ禍で住民説明会を開けず、今後も地元自治会の合意を得るのは難しいと判断したという。計画を誘致・推進してきた阿南澄男市議らは12日、大栄環境を訪ね金子文雄社長と面談し、撤退意向に合意していた。住民投票の結果を受け、計画断念を要請してきた栁澤市長は『大栄環境と一部推進派が合意したことで、(同社が)正式に撤退の意向を伝えてきた。これを受け本日、池新田財産区管理会と契約解約に向けた協議を始めた』とのコメントを出した。大栄環境と財産区は建設予定地の賃貸借契約を交わしているが、今後は解約の違約金、地代の返却交渉に焦点が移る」と報道しました。
  3. 当職(藤森弁護士)の方針
    私の基本的スタンスは真相の全面究明です。大栄環境の全面撤退は当然のこととして、進出の働きかけから撤退表明に至るまでの真実の解明に迫ることが、今後の池新田のあり方につながると考えます。
    当面の課題としては、大栄環境が撤退するに際し、大栄環境が池新田財産区に違約金等の請求をすることによって実質的に池新田財産区が損害賠償や負担をさせられることがなく、推進派の責任と負担において対処がなされるよう、撤退の推移を見極めて行きたいと考えております。
  4. 現在、推進派とそれを容認して来た市当局に対する法的責任を問う訴訟は4件あります。
    ① 静岡地裁令和2年(行ウ)第15号
      公文書部分不開示決定取消請求事件
      次回裁判期日 2021年5月13日(木) 14:30
      住民が池新田財産区と大栄環境の土地賃貸借契約書の開示請求を行ったところ、賃料及び契約期間が黒塗りで不開示とされたため、その公開を求める裁判です。
    ※ 撤退するからと云っても真相の全容を解明するには期間と賃料は重要な情報ですので裁判は維持します。
    ② 静岡地裁掛川支部令和2年(ワ)第88号
      損害賠償請求事件
      次回裁判期日 2021年4月27日(火)16:30
      阿南澄男市議と沖静男公民館長が「御前崎リサイクルエネルギープラザ推進組織」の表に町内会幹部の氏名を掲載したことにつき、無断で氏名を掲載された住民たちが、阿南市議及び沖公民館長を私文書偽造・同行使の罪で告発状を県警本部に提出し、同告発の事実を藤森弁護士が単独で記者会見しその内容が報道されたことに関して、阿南市議及び沖公民館長が名誉棄損であるとして、告発した住民4名に対し慰謝料請求している事件です。
     ※被告にさせられた人たちは逆に提訴自体の違法不当性を主張しており、真相の全容究明のため裁判は続けます。
    ③ 静岡地裁令和2年(行ウ)第21号
      損害賠償請求権行使請求事件
      次回裁判期日 2021年5月13日(木)15:00
      地方公務員の特別職である公民館長は、中立公正に職務を遂行する義務があり、特定の市会議員や私企業の利益追求のために協力することがあってはならないにも関わらず、沖公民館長はこれを全く無視し、阿南議員と共同して本件産廃施設誘致に奔走して来たものであり、これらの行為は社会教育法23条1項1号の禁止行為である「その他営利事業を援助する」ことに該当すること、沖公民館長は、公民館館長という地方公務員の特別職にありながら、招請された2回の特別委を欠席し、市会議員を始め住民投票で反対票を投じた90.2%の市民が望んでいた産廃施設誘致の真実の解明義務を放擲したことから、市長に対し、市が蒙った損害(沖公民館長及び沖地区センター長に支払われた報酬)を、沖公民館長、公民館長の任命権者である教育委員、及び地区センター長の任命権者である市長に損害賠償請求するよう求めている事件です。
    ※真相の全容究明のため裁判は続けます。
    ④ 静岡地裁令和3年(行ウ)第3号
      損害賠償請求権行使請求事件
      次回裁判期日 2021年5月13日(木)15:15
    (1)池新田財産区と大栄環境間の土地賃貸借契約締結発覚(2017年12月20日中日新聞報道)後も、副市長、総務部長、財政課課長は地方自治法や条例の正しい解釈に則って賃貸借契約が議会の議決事件であることを市長や市議会に伝達せずに(正しく伝達していれば市議会の議決案件であることを議会は早期に発見でき、賃貸借契約の違法・無効性も早期に発見できた)、その結果、市当局は議会を正しく導くことに失敗して2019年12月8日の住民投票に至らしめたことによって、住民投票に要した764万6000円の損害を市に与えました。
    (2)阿南市議が議会人でありながら議会に故意に相談報告する義務を怠った責任
    ① 地方自治の本旨は議会で十分に議論を交わすことにあります。地方自治が民主主義の学校と云われる所以は自治体の政策を、住民が首長や議員にお任せではなく市政の重要事案・自治体の政策に関心を持ち、請願や住民説明会を求める等して議論に参加して政策の重要事に関わっていくことが、地方自治のみならず国全体の民主主義に寄与するという考え方からです。
      片山善博元総務大臣・元鳥取県知事・現早大教授は「地方自治の仕組みの中では地方議会が自治体の最高意思決定機関である。国会が法律を制定し、予算を決めるのと同じように、自治体の条例も予算もすべて議会に決定権がある。・・・知事や市長などが目立ったり世上を賑わしたりするので、自治体でもっとも強い権限を持っているのは首長だと思っている人が多いが、実は首長たちは議会が決めた条例や予算を執行する立場でしかない。地方自治の中心は本来議会である」(「民主主義を立て直す」P124 岩波書店)と述べています。
    ② 現に地方自治法は議論を交わす場を用意してあります。法115条の2(公聴会等)は、1項は「普通地方公共団体の議会は、会議において、予算その他重要な議案、請願等について公聴会を開き、真に利害関係を有する者又は学識経験を有する者等から意見を聴くことができる」、2項は「普通地方公共団体の議会は、会議において、当該普通地方公共団体の事務に関する調査又は審査のため必要があると認めるときは、参考人の出頭を求め、その意見を聴くことができる」と規定します。
    ③ 27,820㎡(2.782ha、8415.55坪)という広大な財産区の土地に産廃施設が進出するというのであるから、住民として最大の関心事となりその是非について自治体の最高意思決定機関たる議会で議論するのは当然のことであり、住民レベルでも池新田財産区の住民に限らず全市的にその計画を知る権利があり、議論に参加する権利があります。
    ④ 御前崎市議会が大栄環境の進出を本件契約(2017年12月5日)前に覚知していれば、地方自治法115条の2第1項にいう「重要な議案」として公聴会を開き、利害関係を有する住民や学識経験者等から意見を聴くことができたのです。また、同条第2項によって参考人として大栄環境の社長らの出頭を求め、当該施設の南海トラフに対する耐震性等を十分に聴くこともできたのです。特別委員会を設置して討議することも可能でした。
    ⑤ しかし、阿南市議は、議会人として、まずは議会に諮るべきものを議会に相談も報告もすることなく議会や池新田地区5町内会の役員・主要メンバーを除く大半の一般の池新田財産区住民、池新田以外の御前崎市民に周知させることなく契約締結に邁進していたものです。
    (3)財産区管理会の正副会長は、2017年11月15日に開かれた管理会の定例会議の場で、出席した管理委員に対し、真実はまだ市長が賃貸借契約書を見てもいないし、もちろん調印もしていないのだから、契約締結に至っていないにも関わらず、既に契約したと虚偽の報告をしました。その虚偽報告により、少なくとも3名の管理委員は契約が済んで了ったのであれば仕方がないと諦めさせられました。
    (4)阿南市議、沖公民館長、財産区管理会の正副会長は、当該賃貸借契約の締結は地方自治法96条1項6号、「市議会の議決に付すべき契約及び財産の取得又は処分に関する条例」第3条に定める議決事件であること及び財産区運営の手引の存在を知り承知していながら共同して、市長の誤解(財産区は町内会類似のものという誤解)を奇貨として所有者でもなく管理者でもないのに処分権限があるかの如く大栄環境と交渉し条件を煮詰めて決定し、管理会の委員全員の同意も得ていると市長を誤信させて決裁させました。その結果、住民投票を求める運動が展開され2019年12月8日の住民投票に至らしめたことによって、市に764万6000円の損害を与えたものです。
    (5)よって、市長に対し、市が蒙った損害(住民投票にかかった費用764万6000円)を市長、阿南市議、沖公民館長、財産区管理会正副会長、副市長、総務部長、財政課課長に損害賠償請求するよう求めている事件です。
    ※大栄環境が撤退しても、住民投票にかかった費用は市が蒙った損害であることに変わりありませんので、裁判は続きます。
      本件大栄環境との賃貸借契約は、議会や池新田地区の大半の住民や池新田地区以外の大半の市民に知らされず、一部の推進派によって推し進められたものでした。御前崎市池新田地区の民主化(情報公開と活発な議論の交換、昔風に云えば「万機公論に決すべし」の精神)のために、これまでに提起した住民訴訟は継続し(上記①、③、④)、提訴された事件(上記②)には応訴と反訴をし、真実と責任の所在の解明を続けます。

2020/9/10

御前崎市に対する賃料と期間の公文書部分不開示決定処分取消等請求訴訟の報告(その1)

第1 裁判の報告

  1. 公文書部分不開示決定処分取消等請求事件の第1回口頭弁論期日が、2020年9月10日(木)午前10時30分から静岡地裁民事2部合議係で開廷されました。本件は、御前崎市の池新田財産区の土地が、財産区管理者御前崎市長によって、2017年12月5日大型産廃処理施設建設のために大栄環境㈱に賃貸された契約書の開示を求めた住民に対し、2020年3月26日、市長は契約期間と賃貸料金/年額等を非開示とする処分を下したのに対し、住民が処分取消と国賠法による慰謝料を請求する訴訟です。
  2. 被告御前崎市は裁判期日までに答弁書を提出しないまま、第1回口頭弁論期日を迎えました。
  3. 被告御前崎市の代理人弁護士は、口頭で「原告の訴えを棄却する」という判決を求めました。
     裁判官から被告御前崎市に対し、不開示部分(契約期間及び年額賃料)を開示することで大栄環境に与える影響を具体的に主張するよう求めたのに対し、被告御前崎市は「答弁書は未提出であるが、既に作成済であり、同書に具体的に記載している。本日(10日)中に提出する」とのことでした。
  4. 裁判期日後、原告代理人に事務所へ答弁書が届きましたので、同答弁書を下記に添付します。
     答弁書で被告御前崎市は、契約期間及び年額賃料を開示しない理由を「開示することにより、契約当事者の権利、競争上の地位、その他正当な利益を害するおそれがあるため」、及び「具体的には、賃料、契約期間を開示することによって契約当事者である訴外大栄環境の経営特に財政状況に関する影響、情報が明確化されることによる同社への悪影響に配慮したことによる」と主張しています。
     しかし、被告の主張では、御前崎市池新田財産区の土地を賃貸借するに当たり、その期間及び賃料を開示することが、大栄環境にどのような悪影響があるのか、全く分かりません。御前崎市は産廃業者のみに顔を向けて行政をしていると自認しているようなものです。御前崎市民や財産区民は全く無視されています。さらに、2019年11月18日に開かれた御前崎市の産業廃棄物処理対策等調査特別委員会会議において、ある委員が「もし可能でありましたら、黒塗りではない契約書を見せていただきたいという希望です」と発言したのに対し、栁澤重夫市長は「黒く塗り潰さなくて皆さんに公開できるようなものにしていきたい」と答弁したことに明らかに反します。原告は答弁書に対する反論を用意します。
  5. 次回裁判は2020年10月20日15時30分、弁論準備手続となりました。
     次回の弁論準備期日は非公開で行われるため原告以外の方の傍聴はできませんが、裁判終了後には報告会を行いますので、是非ご参加下さい。
     この答弁書に関するご意見や関連の情報をお持ちの方は当事務所のメルアドにお送り下さい。

答弁書はこちらです(PDFファイル)

2020/7/14

御前崎市、大型産廃施設稼働阻止運動第3報、
2020年6月5日に提訴した住民訴訟事件(静岡地裁令和2年(行ウ)第12号)の第1回口頭弁論期日が8月28日(金)14:40に決定しました。

7月10日、裁判所から連絡があり、住民訴訟事件の第1回口頭弁論期日が8月28日(金)14:30に決まりました。是非多勢傍聴に来て下さい。口頭弁論終了後、弁護士会館3階へと場所を移して説明・意見交換会を行います。御前崎産業廃棄物施設建設に反対の方は、是非ご参加下さい。

2020/5/7

御前崎市、大型産廃施設稼働阻止運動第2報、住民監査請求書を提出

  1. 5月1日午後2時、13名の住民が御前崎市監査委員加藤英男氏、同大沢博克氏に対し、御前崎市職員措置請求書を提出しました(加藤委員は市のOB、大沢委員は市会議員です)。
    6名の方々と代理人の私が午後2時少し前に市役所前に集まり、新聞(静岡、中日、朝日、毎日、読売)各社の記者、TV(NHK、SBS、テレ静、テレ朝)がカメラを構える中、請求人を代表して長島孝さんが監査請求に至った思いを述べて請求書類を監査事務局に提出し、受付印を押してもらいました。
    その後、記者会見に臨み質問を受けました。
    NHKは同日夜8:55に放送されました。私は見ていませんが、SBS,テレ静、テレ朝も放送されたことと思います。
    5月2日、新聞は朝刊県内版で報道されています。
  2. 措置請求書を以下に掲示しますので是非お読み下さり、質問、意見を下さい。監査請求の目的は、真実と責任の所在解明です。

    御前崎市職員措置請求書はこちらです(PDFファイル)

    監査の手続きとしては、請求者と執行機関の意見陳述という機会が設けられます。いずれも同じ日に公開で行われますので、日時が決まれば、当HPでお知らせします。多くの方の停聴を望みます。
    真実と責任の所在の解明に努めます。
    監査請求に対する監査委員の結論は5月1日から60日以内に行わなければならないことになっていますので、いわば待ったナシです。監査結果や勧告の内容に不服であれば、住民訴訟を静岡地方裁判所に起こせます。
    裁判の中では、真実と責任の所在の解明により近づけることが出来ます。
  3. 住民監査請求の第2陣請求者を募っていますので、希望者は長島孝さん(携帯番号090-3839-8009、FAX0537-86-5065)か、http://www.omaezaki.infoに申出て下さい。藤森弁護士への委任状に署名押印して頂きます。
  4. 真実と責任の所在の解明に関わる情報提供を当事務所へお寄せ下さい(但し、無償です)。情報提供者の秘密は必ず守ります。

2020/4/14

御前崎市、大型産廃施設本格稼働阻止訴訟、裁判の報告(その1)

第1 裁判の報告

  1. 2020年4月10日(金)午後2時から静岡地裁民事1部合議係で、第2回口頭弁論期日が開廷されました。
    池新田財産区の住民3名が原告となって2019年11月15日静岡地裁に「2017年12月5日付で池新田財産区(代表者は御前崎市長栁澤重夫氏)が大栄環境株式会社(本社大阪府和泉市)との間で結んだ土地賃貸借契約は無効であることを確認する」という内容の請求の趣旨(裁判)を求めたものです。
  2. (1)裁判提起後、住民が静岡県総務部企画監(自治行政担当)編の「財産区運営の手引」を見つけ、私に送ってくれました。それによると何と「財産区管理会の同意は、法律行為についてはその効力の発生要件であるので、同意を要する事件を、同意を得ずに執行すると、当然無効の行為となる。また、議会の専決事件と異なり、市長村長が専決処分を行い、事後に財産区管理会の承認を求めるということはできない。同意の具体的手続きを説明すると、市長村長は、財産区管理会に対して同意を求める具体的事項を説明した文書を送付して同意を要請し、財産区管理会はこれを審査して同意又は不同意を決定し、その旨を市長村長に文書で回答する」とあるのです。
    (2)そこで本件ではどうだったのかと「県の手引」に当てはめてみました。
     すると
    ① 抑々御前崎市長は財産区管理会に対して、「①同意を求める具体的事項を説明した文書を送付」していないから当然に「②同意の要請」もしていない。
    ② 次に「③財産区管理会はこれを審査」はしていないし、「④同意又は不同意を決定」していない。
     2019年11月29日に開かれた御前崎市議会の産業廃棄物処理対策等調査特別委員会で、本件賃貸借契約(2017年12月5日)当時の池新田財産区管理委員であったA氏とB氏は委員の質問に対する答弁をし①市長が上記の同意を求める具体的事項の説明をした文書の送付をしていなかったこと、②財産区管理会は(賃貸借契約締結の)審査をしていなかったことが明らかになりました。よって「県の手引」からすると契約は無効となります。
     また御前崎市池新田財産区管理会条例の第6条1項は「管理会は会長が招集する」と定めているが、本件賃貸借契約の件で松下敏行会長が管理会を招集した事実もありませんでした。契約の無効性を補強する事実です。
    (3)私は訴状提出の段階では本件賃貸借契約が公序良俗違反(民法90条)だから無効であるという立て方をしていましたが、「県の手引違反 無効」を主位的請求の根拠とし、公序良俗違反無効を予備的請求の根拠に変える主張書面(原告第1準備書面)を2020年2月5日付で提出しました。
  3. その上で、2020年2月7日第1回口頭弁論期日を迎えました。
     大栄環境は答弁書を提出し、本案前の答弁として「原告の訴えを却下する」という判決を求めました。原告らは賃貸借契約の当事者ではないので、無効判決を求める「確認の利益がない」とし、中味の審理に入るのではなく、門前払いを求めてきたのです。一方池新田財産区は、この時点では「なお、以上の通り確認の利益の問題であるので訴訟条件(要件)の問題と考えられ、それが無い場合訴え自体が違法として、訴え却下の本案前の答弁とするべきであろうが、本件については一定の評価が可能と考え、現段階での答弁としては請求棄却の答弁とするものである」という答弁書を提出して来ました。
  4. (1)第2回口頭弁論期日(4月10日)までに、私は東大元教授新堂幸司の「新民事訴訟法」や関西学院大学元教授上田徹一郎の「民事訴訟法」が、「他人間の権利関係を訴訟物とする場合でも、その権利関係の存否を確認することによって、被告に対する関係で、原告の法律的地位の安定を得られるならば、そのような訴訟物についても利益が認められる」という学説を援用して反論した。
     被告池新田財産区は4月7日付で準備書面(1)を送付して来、その中で原告の請求には確認の利益をないと主張するに至った。
    (2)原告は提出した4月7日付準備書面(3)の中で、
    「第1 住民投票結果を受けた市長らの動き
    1. 2019年12月26日、市は被告大栄から申し出があった土地利用の事前協議に応じず、年明けにも関連書類を返却する方針を明らかにした(静新2019年12月27日朝刊)。
    2. (1)2020年1月10日、栁澤市長は被告大栄の金子文雄社長を市役所に呼び、「計画断念の申し入れについて(要請)」を交付し、併せて土地利用事前協議申出を返戻した。
      (2)上記申し入れを受けて金子社長は「一時立ち止まり、住民の理解を得る努力をする」と述べ、建設手続きの一時中断を表明した(新聞記事)。
    3. (1)2020年1月15日、市長は県庁で川勝知事と面会し、被告大栄に計画断念を要請したことを報告した。川勝知事は「全面的に賛同する」と市長の判断を支持した。市長との面談に関する知事発言要旨は甲30のとおりである。
      (2)これを報道した静新の記事が甲31である。
    4. 2020年1月20日、被告大栄は市議会の特別委員会の参考人招致に応じた。被告大栄の井上吉一専務は、委員の質問に対し「(住民説明に)何年かけると言う表現はしづらい」と答えた。計画地である池新田財産区の賃貸借契約について、委員からは一時解除すべきとの意見も出たが、下田室長は『その考えは今のところない』と答えた。
    5. 2020年3月20日市長は「産業廃棄物処理施設の経緯及び今後の対応」を公表し、その中で「引き続き投票結果を尊重し、市民に寄り添い、事業者に計画断念を強く求め、そして土地賃貸借契約の解除に向け、『建設は絶対に認めない』という強い意志を以て全力で取り組むことをお約束します」と書き記した。

第2 被告財産区の代表者御前崎市長に対する求釈明の申立

  1. 2020年1月20日以降に、市長、市の機関(関係部署)、市議会が被告大栄と接触したことの①有無、②有りとすれば誰(どの機関、議会)が、②いつ、③どういう目的で、④その結果はどうなったかの釈明を求める。
  2. 本件土地賃貸借契約書13条1項本文で、「甲は、次の各号の一に該当した場合にはいつでもこの契約を解除することが出来る」と定め、4号は、「乙が当該土地を利用して行う事業に関して、静岡県又は御前崎市の行政指導に従わなかったとき」と定めている。そこで以下の釈明を求める。
    (1)市長は2010年1月10日に「計画断念の申し入れについて(要請)」被告大栄の金子社長に口頭及び文書で申し入れたことは①上記行政指導には該当しないのか。②しないとすればその理由
    (2)①甲33の2020年3月20日付「引き続き投票結果を尊重し、市民に寄り添い、事業者に計画断念を強く求め、そして土地賃貸借契約の解除に向け、『建設は絶対に認めない』という強い意志を以て全力で取り組むことをお約束します」にある土地賃貸借契約の解除に向けての約束の履行として、①近い将来、市長は計画断念を求める行政指導をする意思の有無
     ②有りとすればその時期
     ③無いとすればその理由」
     これに対し、大栄環境は「原告らは、御前崎市長に対する求釈明を行っているが、本訴訟において御前崎市ないし、同市市長は当事者となっておらず、かかる求釈明は失当である」と主張し、池新田財産区は「原告は、本件契約に関する住民投票を受けてその後の御前崎市長並びに被告大栄環境側の対応を主張するが、このことと本件訴訟は直接関係するものではなく、特に本件訴えの根拠としての合理性を根拠付けるものではない。また、同様に求釈明がなされているが、その内容も結局前項の内容を確認するだけのもので、本件訴訟の根拠付けにはならない性質のものであると考える。従って、被告財産区としてはこの求釈明に応じる考えは無い」と主張した。
    (3)このような経過で4月10日の第2回口頭弁論期日を迎えました。裁判長から中間判決(門前払いを認めるか否か、中味の審理に入るか否かの判決)をする意向が示されたので、私から大栄環境の第2準備書面に対する反論を4月24日(金)までに提出することを約束し、次回第3回期日を5月20日午後4時とすることに決定しました。その日に一旦終結され、6月か7月に中間判決が下りることになります。
    (4)私は門前払いの判決はないものと確信しておりますが、中間判決に対して敗訴した方は高裁に控訴し、更に高裁判決に対して上告することが可能です。中間判決が確定するまでに1年以上かかることも予想できます。そこで、御前崎市民、池新田財産区民の方々に私から新提案をします。

第3 ご提案(住民監査請求と住民訴訟の活用)

  1. (1)上記のとおり、本件賃貸借契約は「県の手引」違反が明白であり、「県の手引」によれば、無効ということになります。手続違反で元々無効なものを調印した市長の責任・市長の押印を止めなかった事務方幹部の責任、強引に市長に押印させた推進派の有力幹部(議員・公民館長など)の責任が発生します。真相の解明と責任の所在の追求の手段として住民監査請求を活用しませんか。
     監査委員が請求を棄却した場合には住民訴訟(静岡地裁に係属)という手段を活用して、粘り強く真相の解明と責任ある者に対する損害賠償請求を求めることが出来るのです。
    (2)元々「県の手引」に違反して無効な契約を成立させたことによって発生した損害には、住民投票条例を成立させるに要した市の職員等に支払ったお金、同条例実施に要した市の職員等に支払ったお金は損害に該当すると思います。
     これらの損害を市長は責任ある者に対し損害を賠償せよという監査請求は御前崎市民ならだれでも請求人になれます。
  2. (1)また、本件賃貸借契約書13条1項本文は「甲は、次の各号の一に該当した場合にはいつでもこの契約を解除することが出来る」と規定しています。しかし市長は行政指導をして契約解除をする姿勢を見せません。
     その不作為(行政指導権の不行使)は権限の逸脱濫用に該当すると私は考えます。契約解除をした上で速やかに当該土地を原状に回復させて土地返還させ、産廃施設進出の禍痕を断つべきです。そして速やかに2020年度として受領する地代を清算すべきです。
    (2)これらの市長の権限の不行使による財産管理の懈怠をテーマにして、住民監査請求を求めるものです。この請求人は池新田財産区民です。
  3. 2020年4月2日の市長選で栁澤重夫氏が再選されました。「事業者に計画断念を求める」という掛け声だけでは前進がありません。住民監査請求や住民訴訟を活用して真相の解明と責任者の追求をやってみませんか。

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